見るべきほどのものは/タイムトラベルはよく言いすぎ 2023/10/13 〜2025/03/06
ほさきから、ひらたさんへ
2023/10/13~14(金、土)
マリンライナーで瀬戸大橋を渡るうさぎ達の写真を撮ろうとしたところで、日記更新のお知らせが届きました。更新に伴い前回、つまり半月ほど前に書いた自分の、ここ半年ほどにかけて起きたことについての記載を読み返しながら、まあずいぶんと冷静そうに書いているものだと笑いたくなるような、過去の自分にそっと背を撫でられたような気持になりました。どう考えても当時の自分にはあれが精一杯だったなあ、と思います。
香川県には以前仕事で行ったことがあるのですが、その時は飛行機で移動したこともあり、海や川を身近に見る旅程は新鮮です。それぞれの町内会? で祀っている金毘羅さんのため、ここ数週間はあちこちで獅子舞の奉納がされているのだと教えてもらいました。
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| 瀬戸大橋を渡る3匹。 |
今回の旅はイサム・ノグチ庭園美術館が目的でした。
週に3回、予約制で一日3回のタイミングで開くこの美術館の存在を知ったのは直島美術館に行った時のことです。日も沈みかけたころに船から降りて乗った、車両の少ないローカル線は自分同様、美術館帰りの人が数人乗っているばかりでとても静かだったのを覚えています。島の人に貰ったという蜜柑を分けてくれたその人は国内外のたくさんの美術館を回っているようで、あそこはとても良かった、と庭園美術館のことを教えてくれたのでした。何となくですが、ゆうさんもお好きそうな場所だな……という印象です。
ガイドツアーの時間に行ったこと、ニューヨークにも美術館を持つ作家の美術館ということもあってか、英語のガイドを求める人と日本語ガイドを求める人との割合はおよそ半々か、前者が少し多いくらいだったでしょうか。周囲から聞こえる誰かの発語が日本語でない環境が妙に楽で、直島に行った際もこんな感じだったなと思い出しました。
作品を取り巻く石壁から作家が指示して作ったという美術館はこのご時世では珍しい(と感じてしまった)撮影許可スポットがどこにもない美術館なのですが、それがどんなに素晴らしいものであっても世界中に広まらなければいけないものではないのではないかと思ったりしました。
庭一面に地元の土を敷き彫刻作品を作家の指示通り配置し、二つの山を借景とする手法は禅寺の石庭に近い気がしますが、作品のスケールもあってかむしろ無国籍、あるいは大陸っぽいなと思いながら見ていました。そういう枠組み自体、嫌いそうな作家ではありますが。
一人になれるから、カヌーに乗りたかったのか?
でも、まだ兄さんがいる。
陸から見れば、一人にしか見えないよ。
(成井豊「ハックルベリーにさよならを」)
最小限の荷物を持ってどこかへ移動するたび、どこまで行っても自分からは逃げられないのだなと思います。けれど、見知らぬ景色に身体のほどけるような気持に時折なるのも事実です。
ひたすら歩き続けるか、でなければひたすら眠り続けていた旅でした。
2023/10/20(金)
外に出ると金木犀の香りがします。
来週から週3日の出勤になる予定でしたが、いろいろ相談した結果、もう一週間はまだ週2日勤務にしときましょうということになりました。
わたしは早生まれなのですが、他の子どもに比べて体格が小さいことを母親が幼稚園の先生に相談したときに、たくさん寝たら追いつきますよ、とあっけらかんと言われた……という話を、最近よく思い出します。結局体格、というか身長はろくに伸びなかったのですが。
そんなわけで引き続き、よく寝ています。
旅行中にガザの爆撃が始まり、侵攻は今も続いています。
ロシアのウクライナ侵攻の時もそうでしたが、武力侵攻というのは本当にあっけなく、それが当然の流れであるような顔をして始まりますね。
twitterからしばらく距離を置くことにしました。
私がコロナになり所属していた場所から離れ浦島太郎のように取り残されてもそれぞれの人にそれぞれの日々があり、タイムラインは人生ではないけれども世の中には問題が山積みで戦争も災害も疫病も終わらない。だから私も粛々と日々を送り、頭を切り替え体調を整え『みんな』のようにならなければいけない、寝込んで休んだ分も少しずつ頑張っていけばちゃんと戻るはずで………疲れた、と、ふいに思ってしまったのでした。ガザは重い一藁でした。
朝夕は寒いのに日中はまだ夏日になるようです。レグウォーマーなども出しているのですが、外出時の服装が何とも難しい。
2023/10/24(火)
連休の少し前から心身ともに調子が悪く、ここ最近はひたすら寝たり歩いたりしていたのですが、そういえばコロナの後遺症に効くという話があったな……と思って飲んだアミノバイタルが功を奏したのか、すっきりした朝が久しぶりに訪れてびっくりしました。どうやらここ最近は純粋に肉体疲労がとても強かったようです。
twitterからは引き続き距離を置いていて、それはインプット、つまり延々と襲いかかってくる情報量から心身を守るためだったのですが、実際に離れてみて感じたのはあの場所は思っていた以上に自己検閲の圧が強くアウトプットにも影響を与えていたのだな、ということでした。
とはいえ、いやいやSNSなんて好きに呟けばいいじゃないかという意見にも個人的にはあまり賛同できなくて、それは何故かというと短歌その他での経験が大きくて、しかし以前の日記に書いたようにtwitterで短歌を始めたわたしは……めんどくさいですね!
いずれにせよ、わたしにとってあの場所がかつてとずいぶん違う場所になったのは確かで、引き続き距離を置いた方がよさそうだなというのが今の印象です。どうでもいいことばかり考えてしまう頭の中のリズムが、少しゆっくりになった気がします。
そうそう、忘れてましたが楽器の話。
ファゴットという、低音の木管楽器です(なので『弾いて』はいません(笑))。オーケストラ部に所属していた高校卒業後結構すぐに買って、でも重たいこともあって定期的に演奏するような場にも所属できず死蔵していたのでずっと罪悪感を抱えていました。
色々手のかかる楽器なのですが数年前に軽い楽器ケースが販売されていたのをメルカリで見つけて購入したので、少し楽になりました。いっそもう処分した方が……と思ったことも何度かあるのですが、演奏できる場や人に出会えたのはよかったなと思います。二十年近くかかりました。
ひらたから、ほさきさんへ
2023/12/08(金)
またすっかり時間が空いてしまいました。大きな仕事が片付いたと思ったら、あまり片付いておらず、12月に入ったら入ったで夜中まで働くような日を過ごしていました。少し前に「もう無理!!」と思い、助けを求めたところ、あまり良い形で助けを得られず、自分で解決しようとしたら大炎上してしまい……今日になって少し一息つけました。どうしてもっとうまくやれないのか。反省しきりです。
イサム・ノグチ庭園美術館!! うらやましいです。個人的にイサムノグチの照明やローテーブルを好ましく思っていて(といっても買う勇気はないのですが)、よく画面とにらめっこしています。美術館もいつか行ってみたいなあ。
直島へは今の職場に転職する前に一度行きました。もう7、8年くらい前でしょうか。
以前どこかでお話ししたかもしれませんが、直島の思い出というと、いろいろありますが、やはり他の島にわたるときに見える製錬所の存在でしょうか。たくさん美術品を見たのに、それよりも島で聞いた話のほうがずっと記憶に残っているから不思議です。直島内の宿を転々とし、たまたま移住した人がやっている宿で、直島は製錬所があるからこそ観光客をおおらかに受け入れられるのだ、という言葉を聞きました。その言葉だけはときどきふと思い出して、当然ながら観光するだけではわからないことがあるんだよなあなどと思ってしまいます。もちろんわたしが聞いたのはN=1ですから見解はいろいろあるのだとは思うのですが。
2025/03/05(水)
上記の日記を書いてから、1年以上空いてしまいました。1年……? いやそもそも2023年10月にもらってるのに12月に書き出しているのがおかしい。そして炎上しているとか言っている……でももう細かいことはあまり覚えていません。遅れて本当にすみません。
覚えていることを書きたいと思います。
これは言い訳になるのですが、2023年からこちら、断り切れずにあれもこれもと仕事を引き受けた結果、2024年の前半はほとんどパンクしていました。もうだめだ、と思い(そう思うのは何度目なんでしょう、いい加減学習してほしい)、2024年の後半はほぼこわれた生活と自分自身の体調をたてなおすことに集中していました。お金を稼ぐための仕事以外にも、何を思ったか、地域の自治会の仕事まで引き受けて、この1年はほとんど仕事と、地域の集まりのトラブル処理に追われ、なんともいえない時間を過ごしていました。
最近はお金を稼ぐ方の仕事もやっと適切な量になり、暗黒の思考にとらわれることも減ってきました。地域の仕事もあと数か月で終わりなので、ほっとしています。早く終わってほしい。
とはいえ、良いこともありました。2024年の10月に実家の庭に迷い込んできた子猫を引き取りました。夏生まれのサビ柄の女の子です。猫と暮らしたいとずっと思っていたので夢が叶った形です。我が家にやって来てくれてありがとう。
迎えたときに4か月くらいだったので、今は8か月。身体もしっかりしてきて、ごはんもよく食べます。寒いとお腹を壊すので、部屋をあたためることに必死です。その結果、この冬の電気代は今まで見たことのない額になってしまい、これが…いのちをまもる…ということ…!!と思っています。でもそのおかげで今年はわたしも風邪をひかずにすみました。子猫を大事にするのとおなじように人間(自分)のことも扱わなければならないんだな……と学ぶ日々です。自分のことはどうも雑になりがちです。
2025/03/06(木)
猫と暮らすようになってから早寝早起きになりました。最近だとだいたい夜の8時か9時には寝て、朝の4時か5時には起きています。猫がそのサイクルで生活しているので、それに合わせているかたちです。夜の7時すぎにはお風呂をいれるよう促され(お風呂にお湯がたまっていくのを見たり、そのお湯を味見したりするのが楽しいようです)、風呂キャンセルもしづらくなりました。風呂キャンセルしがちな民なので、時々はキャンセルしてそのまま寝ていますが。
朝、激しく起こされることはないのですが、目覚めた布団の中でスマホなどを見ていると
「人間、起きてる?」と覗きこまれるので、そのなんともいえないかわいさにすんなり起きるようになりました。ごはんをあげて、トイレの掃除をして、ひとしきり遊んだら、人間のほうも食事をする、というようなサイクルです。
そうそう、そうして自分を立て直していた期間に新しい習慣ができ、ノートに手書きであれこれ書くようになりました。誰にも見せないものなので何を書いてもいい、というのが思いのほか精神の安定に役立ちました。地域の仕事をやりはじめてから余裕がなく中国語の勉強もさぼりがちなので、地域の仕事が終わったら、中国語の勉強も再開したいなあと思っている昨今です。
でもこの休んでいた1年、服部真里子さんの短歌の講座が再開して(その話をyenさんやAさんから教えてもらったのはちょうど去年の誕生日でした!)、まさか自分も短歌を再開するとは。いろんな恐れや葛藤がありましたが、最近はそれもだいぶマイルドになりました。自分が良い歌を作りたいという気持ちよりも、他の人の短歌をもっとちゃんと読めるようになりたい、という気持ちが強く、1年かけてやっと少し、入り口にたてたかな?という気持ちでいます。講座は来期も参加する予定です。
yenさんはこの1年どう過ごしていましたか。体調はどうでしょうか。楽器のこと、歌のこと、それからSNSとのかかわりのこと。わたしがこうやって日記を止めてしまっておいてなんですが、またよければ聞かせてください。ああ、あと翻訳のことも。yenさんが翻訳に取り組まれていること、すてきだなと思いながらみています。
わたしもすっかりTwitterからは離れ、いまはblueskyを主軸に、とはいえSNSはほどほどに、といった距離で過ごしています。Twitterにいたころを思い返すと、わたしはそこでじくじくと傷をえぐるようなことを繰りかえしていた気がしています。場から離れると、そういった行為も遠くになっていくから不思議です。傷はすでに治っていたのかもしれない、とも思います。……ただそれも全部全部過ぎたことと思えるようになったから、という感じもして、全部ただの結果というか……「(いろいろあったが)いま、わたしは元気になってきている」というところで留めておくのも、大事なのかもと思うようになりました。
