2021/7/17 - 7/30 優先するものは / パラレルワールド

404 not foundから、ほさきさんへ

2021/7/17(土)

yenさんの日記を読んでいて、この日記をはじめてそろそろ一年になるのかと驚いていました。当時、友人とは2022年くらいまでは今の生活が続くかな、なんて話していたのですが、ワクチンを接種できてももろもろ、生活や経済や、今回損なわれてしまったものが回復していくまでにはもっと長く時間が要りそうだと感じる昨今です。

知人は早々にワクチン接種する手配を済ませているというのに、わたしは未だ集団接種も、個別接種も、大規模接種も予約が取れていません。集団接種はまったくだめそうだったので個別接種に切り替えて近所のクリニックへ予約しに行ったところ、区の要請で予約受付を停めている、とのこと。そんなことは区のホームページには書いてなかった……。ワクチンの供給が遅れていることはニュースを見て知ってはいたものの、こういうことかあ、と思い知りました。結局その日は日時未定の仮予約だけして帰ってきました。

とはいえ、やはりぼんやりしているというか、のん気というか……「なんでなりふり構わず、おとなしく待っていることなどせず、さっさと予約してしまわなかったんだ」というような目線もまた、愚か者と言われているようでしんどいなとも思っています。

そんなわたしですが、今日は『きのう何食べた?』(よしながふみ著)を1巻から読み返していました。1巻のシロさんが最近のシロさんとはまたは違う感じで、かなりしゅっとした男前に描かれていて笑ってしまいます。『きのう何食べた?』の連載開始は2007年。その当時はまだ同性愛者の登場人物が出てくる日常的なことをテーマにした作品は一般誌には多くなかったですよね。モーニングで連載されると知って驚きつつも、うれしく思ったのをいまも覚えています。いまやドラマ化もされ、今年は映画も公開される予定なので、すごいことです!

2021/7/18(日)

家でじっとしていられなくなり、ちょっとバスに乗ってカフェへ出かけました。
渡されたメニューのなかにまるまるお酒のものがあったので、「はっ!まさか、ここではお酒が飲める!?念願の美しいビール!!」と思って意気揚々と頼んだのですが、しばらくたってから「お客様、お酒の提供が現在できなくなっておりまして……」とのこと。そりゃそうだよね…と思いつつ、こんなに晴れていて!?わたしはテラス席に座っていて!?一人で、まわりに誰もいないのに!?ただ、一杯の、一杯のビールにさえ、辿りつけない……悲しみを味わいました。お店のひとはまったく悪くありません。提供出来るのならば、きっと出したかったに違いないのです。

代わりに飲んだアイスティ

そうそう、『ワッフルとモチ』。わたしもさわりだけ見たことがあるのですが、アメリカで「mochi」というと、あの雪見だいふく的なものを指すと聞きました。うまくいえないのですが、一般名詞が商品(かつ商品名)として普及し、キャラクターにまでなってしまうの、ちょっとおもしろいですよね。調べてみたら塩キャラメル、バニラ、チョコレートミント、マンゴー、抹茶など味もいろいろあるようです。ワッフルとモチは冷凍庫で一緒に売られていることが多いのだろうか……。アメリカにも一度は行ってみたいものです(もう、最近旅への欲求がどんどこ出てきて大変です!)

2021/7/20(火)

yenさんが教えてくれた「やったことを書く日記」をやりはじめてみています。ひっそりやってもいいのでしょうが、習慣づくまでは他者の気配を感じつつやろうと思ってみています。どこにもいない先生に向かって連絡帳を書いているような、そういうかんじかもしれません。それでもあったことなどを他者に伝える目的で記していると、言葉はちゃんと外に向かって開いていってくれるようにも思います。書く訓練のひとつになれば。

今日は外に出ていたのですが、偶然オリンピックスタジアムの近くを通りました。ぱっと見、人出が増えている感じがあり、ヒヤリとしました。このまま突き進んだら、あっという間にひどいことになるのではないか(すでに十分にひどいことにはなっているのですが)。素人のわたしでもそんな想像ができるのだから、みんな同じように考えているだろうと思うのです。それを「わかっていて」でも「開催する」というのは市民よりも、何かしらの名誉を優先することでしょう。いったいそれってなんなんでしょう。


ほさきから、404 not foundへ

2021/7/25(日)

オリンピックが始まりました。

連休中は法事のため北海道に行き、今日帰ってきました。同じ行き先、同じ用事ということもあり、4月に行った時とどうしても比べてしまいます。飛行機の便数は増えており(それでも飛行機のサイズはすべて戻ったわけではないようです)、空港や飛行機、ホテルの客数は圧倒的に増加していました。学校によっては19日の週から夏休みのところもあるようで家族連れも多く、22日午後の羽田空港はテレビでよく見る典型的な、大型連休初日の風景でした。「夏休みのため混雑しています」というアナウンスを、複雑な思いで聞きました。
都内在住で平日はふつうに出勤、土日もそれなりに出歩いているので、感染について自分の感覚は麻痺している方だと思っていたのですが、ホテルの朝食ビュッフェの混雑ぶりはそんなわたしにとってもかなり不安になるものでした。今日は空港から高速バスを利用して帰宅したのですが、バスは満席で通路までぎっしり座席が出ていました。暑いのもあってエアコンは稼働しっぱなしですが、窓は開いていません。わたし含め移動の理由はそれぞれにあるでしょうし、このあたりの感覚は個人差が大きいとは思いますが、しかし、しかし。

オリンピック開会式があった23日は法事の前日で、翌日、親族間でも少しだけ話に出ました。もともとスポーツ全般にろくに興味がなく、オリンピックはいつも開会式を見るくらいだったので、引き裂かれるような思い、というのは個人的にはあまりありません。テレビもあまり見ないため、時折ちょこっとのぞくタイムラインの誰かの反応を見てああそういうことがあったのか、金メダルが沢山取れたんだなと後からぼんやり、反響音だけ聞いて知るような感じが続いています。


選手の活躍を見て喜ぶのとコロナ対応などの政治対応を批判するのは両立するという意見もあれば、楽しんだことで現行政治に加担してしまうような不安があるという意見も見かけます。わたしはどちらかというと後者寄りの考えです。以前少しだけ遊んでいた日本刀モチーフのソーシャルゲームでシナリオライターの歴史観に関する問題が発覚したとき、似たような議論があって苦しかったのを思い出します。
シナリオライターがいかなる思想を持っていようとプレイヤーが「公式」から解釈を奪い取ればいい……当時はそんな議論もありました。まったくの間違いではないと今でも思いますが、でも今のように「公式」がこんなにも圧倒的な勢いで四方八方から迫ってくると、創作とかファンタジーとかそういったものについて、自分はずいぶん容易く考えていたのではないかと思ってしまいます。


両の掌に受くる花びらあをざめて此処は清庭と告げられにけり  #刀剣短歌


少し前に観た野田秀樹の『フェイクスピア』について、あんなにも言葉で縦横無尽に遊び続け、返す刀で現実と切り結んできた劇作家が今、こんなにも「現実」の重さに打ちのめされていると悲しくなったことを思います。

それにしても東京よりはましといえ、北海道もずいぶん暑くなりました。気温というよりは湿度が高くて息苦しさが増したという方が正確でしょうか。暑いしあまり外を出歩きたくないね、なんて、我ながら信じられない科白です。墓地で行った法要の際には、東京から持って行った日傘がずいぶん活躍しました。


2021/7/26(月)

最近は寝るとき、頭の近くに保冷剤を置いています。載せるというよりは近くに置いているという感じなのですが、なんとなく眠りが深くなった、気がします。

津久井やまゆり園の事件から今日で五年ということで当時書いたblog記事をタイムラインにそっと放流したり、誰かの記事を読んだりしていました。事件の犯人が働き出した当初はとても誠実な働きぶりだったことや職場の人間関係がひどい状況だったという記事も読みました。その時々に思ったことを書いておくとこうして後になっても読み返せることの力を思いつつ、感じていることを言葉にするのは恐ろしく力のいることだなとも思います。

誰にでも生きる権利があるという当たり前のことをなぜこうも必死で叫ばねばならないのだろう、なぜそういう声が聞こえないと感じてしまうのだろうと当時も思った記憶がありますが、やまゆり園を聖火リレーのコースに置こうという発想といい、状況は何も変わっていない気がします。

自分の書いた記事を読み返しながら、当時追悼集会に行ったことを思い出しました。集会の最後、会場のみんなで手を握ったのです。


2021/7/29(木)

ワクチン一回目を打ってきました。
自治体の体育館での集団接種だったのですが、初めて体育館に行きました。世の中には朝から体育館で筋トレをする人がこんなにいるのかと感心しつつ、接種自体はすぐに終わりました。30分ごとに10人強くらいの設定だったようです。
スタッフの方達同志で時折談笑するような落ち着いた雰囲気のなかで淡々と、30分もかからずに終わったのですが、椅子に座って接種後の15分を待ちながらふと、そうか、ワクチン数が絞られているからこんなに落ち着いているのかと気づきました。案内スタッフが各所に配置され、待機用の椅子はずらりと並んでいるのに、1/3も埋まっていない。本当はこの椅子が全部埋まる想定で準備されていたのが、できなくなったのでしょう。
多くの自治体がそうですがわたしの住んでいる地域も、ワクチンが自治体の要望より少なく配給されることになりそうだと言われていました。その影響で7月以降の個別接種は一日で予約終了、わたしがネットで予約した集団接種も当初の予定より枠を大幅に減少すると言われ、開始10分で予約の枠がいっぱいになったようです。
ワクチン接種について、職場でも恐らくわたしは早い方です。年上の上司に接種予定を伝えたところ、もう受けられるのとびっくりされました。上司の住む地域はわたしの住む町より年齢や基礎疾患での区切りがきっちりしていて、接種は8月半ばになるようです。6月に案内が来ていた職域接種は今週予約手続きが開始され、追加枠の募集は9名のところに20名が応募、抽選となったそうです。
職場全体としては順当に接種が進んで恵まれた状況なのかもしれません。あるところにはあるようだ、と言っていた友人もいました。でも、ワクチンへ至る道があまりにばらばらすぎる。

住んでいる場所や自分や家族の職業、情報を手に入れる体力や知識、そのほかの、時の運としかいいようのない何かによって命に係わる状況があまりに異なること、それについて何の説明もないことをどう思えばいいのだろうと思います。404さん言うところの「なぜなりふり構わず、さっさと予約してしまわなかったんだ」という声や目線は7月上旬、ワクチン供給減のニュースを見ているわたし自身の中にこそあるものでした。何も手を打たず能天気に構えていたらワクチンが打てないまま何か月も過ぎるのではないかと思ったらとても怖かった。
だけど、なぜそんなことで不安にならなければいけないのだろう。そうして焦ってワクチンを接種できるようになって、そのことになぜ後ろめたさを感じなければいけないのだろう。

パイプ椅子で15分待機していた体育館の中、見上げると2階の観客席が見えました。誰もいない観客席の一部にはジャケットやバッグなどが無造作に置かれていて、きっと接種会場を回す医師や看護師、事務職員の方たちの荷物が朝から置かれているのだろうなと思って眺めていました。沢山の人が動いて滞りなく回っていることの有り難さと、そこにまだたどり着けない人がいることのギャップと。

昨日、東京の感染者数は3000人を超え、日本全体では8000人を超えました。

2021/7/30(金)

ポストから出して放っておいた自治体の広報紙に8月のワクチン予約の案内が掲載されていました。このサイトでワクチンの予約ができるよ、自治体で予約ができなくても大丈夫だよというリツイートがTwitterでも増えてきた気がします。おそらく政府から各所に8月のワクチン供給の連絡が来ている影響なのでしょうが、感染者数の増や医療逼迫のニュースと合わせて、切迫感だけが妙に強くなります。

短歌研究を久しぶりに買ったのでちまちまと読んでいるのですが、それはそれとしてゴールデンカムイ無料公開ということで一気読みしてしまいました。最終決戦の場が函館のようで、ちょっと嬉しいです。それにしても連載七年とは……。




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